目次
組織間関係とは
組織間関係とは、相互に自律的な(複数の)組織が、相互に直接的に依存関係を持つことです。
Aという組織が、ある資源を必要としているとします。その資源が希少であり、また特定の供給業者からしか手に入らない場合、その供給業者は組織Aに対して「パワーを持つ」と言えるでしょう。
このような場合ですと、組織Aはは供給業者から権力(パワー)を行使されやすくなります。結果として、組織Aの意思決定に関する自律性が減ることになるでしょう。
以上のような、組織間関係において、特に資源依存関係に着目し、いかに資源取引をマネジメントして行くべきか、という視点で分析を行うモデルを資源依存モデルと言います。
資源依存度を決める要因
資源の重要度
まず、「資源の相対的な取引量」について考えてみましょう。ある組織にとって、外部と取引する全資源の総量に占める割合が大きければ大きい資源ほど、重要性が高い資源となります。
つづいて「資源の緊要性」です。仮に取引量が少ないとしても、その資源が入手できなくなった時に、その組織にとって存続が難しくなるような資源は重要度が高いでしょう。
外部組織の持つ資源の配分に関する自由度
外部組織が、特定の資源に対して、どの程度自ら裁量を持って、その配分や利用法に決定できるのか、ということです。
ある資源が必要な組織Aに対して取締役を派遣したり、民間の組織Aに対し行政官庁が規制を行うことにより、組織Aの資源配分に影響が発生します。
資源コントロールの集中
組織Aが重要な資源を特定の外部組織に依存しているとします。その場合、代替的な入手方法がないと、その外部組織に対する資源依存度が高くなってしまいます。
資源依存関係のマネジメント
ある組織(組織A)にとって、資源を依存している外部の組織は脅威と言えるでしょう。つまり、そのような外部組織は、組織Aに対するパワーを持つといえます。
そのような場合、組織Aは、パワーを持つ外部組織を放置しておくと、外部組織からの干渉が多くなり、組織Aの自律的な経営ができなくなる可能性があります。
そこで、組織Aは自律性を確保するために実行することが、資源依存関係のマネジメントとなります。マネジメント策としては、以下のようなものがあります。
資源依存の回避
組織Aは、必要な資源の入手先を増やすことで、特定の外部組織に対する依存を減らすことができます。このように、代替的取引関係を確保する案があります。
もう一案として、多角化があります。事業の多角化を行えば、既存の事業における特定の資源あるいは特定供給先の相対的依存度を削減できます。
他組織からの支配回避
組織Aが資源依存関係そのものを回避できない場合には、「交渉」「包摂」「結託」など、他組織からの支配を最小にする手段を講じることも有効です。
取引コスト・アプローチ
市場で取り引きを行うには、取引相手を探し、さらに交渉や契約を行うことになります。
しかし、それだけで終わりというわけではありません。
正当な取引契約が結ばれたとしても、相手がきちんと履行しているか、チェックやモニタリングが必要です。
以上のように、取引には様々な負担、つまりコストがかかります。
そこで、取引コスト・アプローチという考え方が生まれました。
取引コスト・アプローチでは、「ある取引について、市場から調達した方がコストが低いか、或いは組織内部で調達した方がコストが安いか」を確認し、その結果次第で組織の取引形態が変化する、と考えるのです。
つまり、取引コスト次第で、適切な組織の境界が決まる(どこまでが当該組織であるか、が決まる)と考えることになります。
組織慣性と組織正当性
組織慣性とは、ひとことで言えば、「組織は変化しにくい」ということです。
組織は、その内部や外部から、自身の変化に対し制約が課されています。こうした状態を「組織慣性が働いている」と表現します。
エージェンシー
エージェンシーとは、依頼人と代理人の関係のことです。
組織においても、エージェンシー関係は存在します。
依頼人となる組織を「プリンシパル」といい、代理人となる組織を「エージェント」といいます。
エージェンシー関係において、ここでは「情報の非対称性」を抑えておきましょう。
本来の契約においてエージェントの役目は、プリンシパルの利益が最大になるように行動することです。しかし、プリンシパルはエージェントの行動を全て把握することは困難です。
また現場で実際に多くの情報を掴むのはエージェントのため、エ-ジェントは自己利益の最大化のために動く可能性もあるのです。
このようなエージェントのモラルハザードを防止するために、インセンティブを設定したり、管理強化などが有効です。ただし、いずれもエージェンシーコストと言われる費用がかさみます。
組織論のタネ本は、桑田耕太郎・田尾雅夫著「組織論」(有斐閣アルマ)
「組織のダイナミクス、組織と環境との関係」は、つかみどころがない
中小企業診断士試験の企業経営理論のうち、組織論の内容は、次の4つに大きく分かれます。
(1)経営組織の形態と構造 | 職能組織・事業部制など、いわゆる組織のハード構造のこと |
(2)組織構成員のレベルの組織内プロセス | 組織のソフト面のうち、個人に関係するプロセス。モチベーション理論やリーダーシップ理論など |
(3)組織のダイナミクス、組織と環境との関係 | 組織のソフト面のうち、組織全体に関わるもの |
(4)人的資源管理 | いわゆる労務管理。中小企業診断士試験では、労働基準法など法規に関する出題が多い |
これらのうち、管理人は、「(3)組織のダイナミクス、組織と環境との関係」が、もっとも苦手でした。
この(3)の具体的な内容は、下記のようなものです。
これらは、TACのスピードテキストなどの資格教本を読んでも今一つ理解できませんでしたし、過去問も、つかみどころがない印象でした。
この記事を読まれている受験生の中にも、管理人と同じような印象をお持ちの方も多いと思います。
「組織のダイナミクス、組織と環境との関係」の攻略は、桑田耕太郎・田尾雅夫著「組織論」(有斐閣アルマ)にあり
「組織のダイナミクス、組織と環境との関係」に関連する出題は、桑田耕太郎・田尾雅夫著「組織論」(有斐閣アルマ)から多く出題されています。
著者の一人・桑田耕太郎氏は中小企業診断士試験の試験委員のため、この分野の出題は、彼が任されているのでしょう。
受験時代、この本を購入して熟読した私は、「組織のダイナミクス、組織と環境との関係」の分野の苦手意識をなくすことができました。
誤解のないように言えば、この本自体も、決して分かりやすい内容ではありませんが、TACのスピードテキストなどには、この本の内容の要約しか書かれていないため、比較論で言えば、圧倒的に、原著にあたった方が理解は進みます。
なかなか理解も難しいため、私の場合は、三度通読して、なんとか「分かった気がする」レベルになった、という状況でした。
時間的には、かなり費やしてしまいましたが、「どうしても組織論が苦手だ」という方は、こちらの原著にチャレンジしてみる価値はあると思います。
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |