こんにちは、トシゾーです。
今回は、労働関係の法律の中で、もっとも基本となる法律とも言える、労働基準法を学習します。
労働基準法は、憲法27条「労働権」の考えかたに基づいて1947年に制定された、労働者全般を保護するための法律になります。
8時間労働制、週休制など、企業や使用者が最低限守らなければならない条件を、この法律では規定しています。
この記事では、労働基準法のうち、「総則」「労働契約」「解雇」「賃金」について、説明していきます。
「労働時間」「休憩」「休日」「時間外・休日労働」については、次の記事を参考にしてください。
※また、労働基準法の概要については下記動画でも説明してありますので、合わせてご参照ください。
目次
労働基準法の総則
労働条件の原則
労働基準法では以下のとおり定められています。
労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない
また、労働基準法で定める労働条件の基準は最低限のものであり、この基準を理由として労働条件を低下させてはなりません。
ただ、やむを得ず、経済情勢などの変化により労働条件を低下させることは、労働基準法に違反するものではないとされています。
労働条件の決定
労働条件は、労使が対等の立場において決定することが原則です。また、労働者及び使用者は、労働協約、就業規則および労働契約を遵守し、誠実にその義務を履行することが必要です。法関係の効力の強弱は、法令>労働協約>就業規則>労働契約の順になります。
均等待遇
労働基準法では以下のとおり定められています。
使用者は、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない
労働基準法では、「性別」による差別の制限は記載されていません。
性別による差別の制限は、「男女同一賃金の原則」および男女雇用機会均等法に記載されています。
男女同一賃金の原則
労働基準法には、以下のとおり記載されています。
使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いを禁止する
本原則で差別的取り扱いが禁止されているのは、賃金についてのみです。
前述のとおり、その他の男女の労働条件については、男女雇用機会均等法にて差別的取扱いの制限が記載されています。
強制労働の禁止
労働基準法には、以下のとおり記載されています。
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制させてはならない
不当に拘束する手段としては、長期労働契約、前借金契約、強制貯金などが挙げられています。
中間搾取の排除
労働基準法には、以下のとおり記載されています。
何人も、法律に基づいて許される場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない
「業として」の意味するところは、「同種の行為を反復継続するか、或いは反復継続する意思がある」ということです。
公民権行使の保障
労働基準法では、公民権の行使を保証しています。
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、または公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない
ただし、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、使用者は労働者から請求された時刻を変更することができます。
公民権の行使にあたるものは「選挙権・被選挙権の行使」「最高裁判事の国民審査」「行政事件訴訟法の民衆訴訟」などがあります。
また、公の職務にあたるものとしては、「国会議員などの議員の職務」「選挙立ち会い人としての職務」「民事訴訟の承認」があります。ただし、予備自衛官や非常勤の消防団員の活動は不可です。
なお、公民権行使に費やされた時間に関する給与は、有給でも無給でも構わない、とされています。つまり、労使の取り決めによる、ということです。
労働契約
労働契約の内容が、労働基準法から外れていた場合
労働基準法に書かれた基準に達しない労働条件を定めた労働契約は、その部分に関して無効です。また、無効となった部分は自動的に労働基準法の基準によることになります。
契約期間
労働契約において、契約期間を定めた場合、一定の事業の完了に必要な期間を定めた場合以外は、契約期間の上限が3年になります。
ただし、以下の場合、5年の労働契約を認めています。
- 専門的な知識、技術または経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識を必要とする業務に就く者に限る)の場合
- 満60歳以上の労働者の場合
労働条件の明示について
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金や労働時間、その他の労働条件について、明示をしなければならない、とされています。
絶対的明示事項(労働契約に必ず明示しなければならない事項)
- 労働契約の期間
- 就業の場所、従事すべき業務
- 始業・就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上の交替制にて就業させる場合における就業時転換に関する事項
- 賃金(臨時の賃金、賞与、退職手当等をのぞく)の決定、計算および支払の方法、締切および支払の時期、昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
相対的明示事項(定めがある場合には明示することが必要)
- 退職手当(適用労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払・支払時期に関する事項)
- 臨時の賃金(除退職手当)、賞与等および最低賃金額に関する事項
- 労働者に負担させるべき食費、作業用品等に関する事項
- 安全および衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償、業務外の傷病扶助
- 表彰や制裁に関する事項
- 休職に関する事項
仮に、明示された労働条件と事実が異なる際には、労働者は、即時労働契約を解除することが可能、とされています。
解雇
使用者による「解雇権の乱用」は避けなければなりません。労働者保護の観点から、使用者の実施する解雇には、様々な制限が設けられています。
労働基準法には、以下のように記載されています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効
解雇制限
労働者が病気や怪我などのため働く能力が低下している際に解雇を受けると、生活が困窮してしまいます。そのため、そのような期間中における解雇は禁止されています。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 業務上の負傷または疾病にかかり、療養のため休業する期間及びその後30日間
- 産前産後の休業する期間及びその後30日間
解雇予告
誰でも、突然解雇されてしまうと、生活に困窮するでしょう。また、再就職の準備もひつようです。そのため、使用者の都合で解雇する差異には、一定の手続きが要求されています。
具体的には、以下のうち、いずれかを実施することが必要です。
- 少なくとも、30日前には解雇予告を行う
- 30日分以上の平均賃金を支払う
一方で、以下のいずれかのケースは、所轄労働基準監督署長の認定を受けた上で、即時解雇することができます。
- 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可となった場合
- 労働者の責に帰すべき事由がある場合(重大な経歴詐称、刑法犯の該当、2週間以上の無断欠勤など)
解雇予告の適用除外
次の労働者については、解雇予告は不要とされています。
- 日日雇い入れられる者(1ヵ月を超えて引き続き使用されるに至った場合は除く)
- 2ヵ月以内の期間を定めて使用される者(当初の契約期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
- 季節的業務に4ヵ月以内の期間を定めて使用される者(当初の契約期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
- 試の使用期間中の者(14日を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
賃金
「賃金」の定義は何でしょうか? 労働基準法では、以下のように記載されています。
賃金、給料、手当、賞与その他の名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払う全てのもの
賃金支払いの5原則
「賃金支払いの5原則」とは、労働者の生活の基盤となる賃金が、確実に労働者本人に渡るように、労働基準法で定められたものになります。
①通貨払いの原則
「通貨払いの原則」とは、賃金は通貨で支払われなければならない、という原則です。
ただし例外がありまして、労働協約を結んだ場合、通勤に要する費用を通勤定期券で支払うことはOKです。また、労働者の同意があれば、賃金を銀行口座などに振り込むことも許されています。
②直接払いの原則
「直接払いの原則」とは、賃金は直接労働者に支払わなければならない、という原則です。これにも例外がありまして、労働者の使者に支払うことは許可されています。
③全額払いの原則
「全額払いの原則」とは、賃金はその全額を支払わなければならない、というものです。例外としては、法令に定めがある税金・社会保険料などは賃金から控除することができます。また、労使協定があれば、住宅等の費用や組合費などを控除することも可能です。
④毎月1回以上払いの原則
⑤一定期日払いの原則
これらの原則では、賃金は毎月1回以上、一定の期日に支払わなければならないことを規定しています。例外として、退職金・賞与等には適用されません。
※労働基準法の続き、「労働時間」「休憩」「休日」「時間外・休日労働」については、以下の記事にて説明します。
労働基準法-総則・労働契約・解雇・賃金(組織論)<まとめ>
この記事では、労働基準法の総則・労働契約・解雇・賃金について見ていきました。
中小企業診断士は、労務のスペシャリストである必要はありません。
しかし、実際のコンサルティングの現場では、人事・労務の課題は必ず出て来ます。
そういった際に、社労士や人事コンサルタントと経営者の橋渡しの役目が中小企業診断士には求められますので、基本的な知識を有しておく必要があるのです。
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