バーナードによる組織の定義
バーナードによる定義
2人以上の人々の、意識的に調整された諸活動、諸力の体系
と、バーナードは組織を定義しました。
詳しく見てみましょう。
①組織を構成しているのは「人間の活動や力」である
人間は誰もが様々な個性を持っていますが、組織として求められているのは個人としての人間の存在そのものではなく、人間が提供する活動や力です。提供する側の人間がどのような個性を持っていても直接組織とは関係ありません。
言い換えれば、組織として成立するためには、人間が組織に必要な活動を提供しなければならず、そのために「動機づけ」というものが必要です。
②諸活動、諸力は体系(system)を構成している
システムとはとは、相互作用を持つものであり、個々の要素レベル以上のものを生み出す全体としての性質があるものです。
組織が各個人の能力や活動の積み重ね(和)以上の成果を上げることができるのは、このようなシステムであるからです。
③意識的に調整されている
組織は、意識的に調整されることではじめて体系を構成します。そのため、計画や組織構造、コミュニケーション等様々な手段で調整を実現します。
バーナードの組織の三要素とは?
バーナードは、組織が成立するためには、①共通目的、②貢献意欲、③コミュニケーションが必要と提唱しました。これらは、「組織成立のための3要素」とも呼ばれます。
共通目的
組織構成員が共通目的を理解し、承認しないことには組織は成り立ちません。
貢献意欲
各構成員に貢献意欲がなければ、活動を提供しないはずです。
コミュニケーション
構成員のそれぞれが共通の目的をキチンと把握し、貢献意欲を保有するようになる前提として、コミュニケーションは必須でしょう。
バーナードとサイモンの組織均衡論
バーナードとサイモンによって主張された組織均衡論とは「人々は組織のために活動を行うが、それは、活動以上の見返りが組織から支払われるからである」という考え方です。
活動とは「貢献」のことであり、見返りのことを「誘因」とも呼ばれます。
ここで、貢献≦誘因(組織の均衡条件)
が成立する場合だけ人々は組織のために活動し、組織が成立・存続する、という考え方です。
経営組織の分業と調整のしくみ
職務
組織のなかで個人に割り当てられた仕事の分担のこと。
分業化
職務を個人に割り当てることであり、「機能による分業」と「階層による分業」がある。
階層
組織は階層構造になっており、階層構造は、職務遂行上の指揮命令(権限)系統の連鎖になっている。
機能(職能)
業務の種類、類似性のことであり、機能によって分業化することにより、担当者個人の作業を単純化、専門化し、生産性を向上させることができる。
機能によってグループ化し、部門化することにより、営業部、人事部、経理部、…等の組織を持つ、機能(職能)別組織という形態になる。
ファヨールの管理原則
①専門化の原則
組織内の各構成員に対してできるだけ専門特化した職務を分担し、作業を単純化して能率を上げることで、組織の目的を効率的に達成するための原則。
②権限・責任一致の原則
権限と責任は等しい大きさとする原則。
③統制範囲の原則
1人の管理者が直接管理できる部下の数には、当然ながら上限(限界)が存在します。もし、その上限を超えて管理を実施した場合、効率が悪くなるという考え方です。
統制範囲の原則は、スパン・オブ・コントロールともいう
④命令統一性の原則
組織の秩序を維持し、かつ経営活動の効率化を実現するには、部下は常に1人の上司から指揮・命令を受けるようにすべきという考え方
⑤例外の原則
ルーティーンな業務については部下に権限を与え(委譲)、上位たる管理者は、専ら、例外的な業務の処理を実施したほうがよい、という考え方
組織の形態
ライン組織
トップマネジメントを頂点としたピラミッド型の階層構造を持つ組織であり、直系組織とも呼ばれます。軍隊型の構造であり、下位の階層の者は直属の上司の指揮・命令にだけ従うという、命令統一性の原則を徹底したものです。
ライン組織のメリットとしては、命令系統や権限・責任が明確な点が挙げられます。また、組織の秩序・規律を保持しやすい点もあります。
デメリットとしては、権限が上位者に集中するため負担が大きくなる傾向にあります。
もう1つのデメリットとしては、組織階層が深まるので、組織全体におけるコミュニケーションの効率が悪くなることも挙げられます。
ファンクショナル組織
それぞれの専門的な職能に中間管理者が従事し、組織メンバーは各専門分野を担当する管理者より直接命令を受けるものです。専門化の原則を徹底しています。
メリットとしては、管理者の負担が減ること、高度な専門能力の発揮できることなどがあります。
デメリットとしては、命令一元化の法則に反して複数の管理者から構成員に指示が発生するため、混乱や葛藤が生じることがあります。
責任の所在がはっきりしなくなるケースもあります。
ライン&スタッフ組織
ライン組織およびファンクショナル組織の、それぞれのメリットを取り入れたものです。
厳格な指揮命令系統を持つライン組織に、高い専門能力を持ちライン部門を支援するスタッフ組織を加えています。
機能(職能)別組織
ライン&スタッフ組織のさらに発展したものです。ライン&スタッフ組織の下部組織が、生産、販売、管理、… というふうに部門としたものです。
事業部制組織
事業の単位で事業部と呼ばれる管理単位をつくり、それを本社のトップ配下に設置する構造の組織です。
事業部は、製品別・地域別・顧客別など、利益責任を負う単位に結成され、分権型管理組織となります。各事業部は権限を大きく委譲され、独立会社のように振る舞うこともあります。
カンパニー制組織
事業部制組織をさらに発展させたものであり、独立採算をさらに徹底させています。各事業部単位はカンパニーと呼ばれます。事業部はプロフィットセンターと呼ばれますが、カンパニーはインベストメント・センターと呼ばれています。
マトリックス組織
従来の機能別組織に、それら各機能を横断するプロジェクトや事業などを交差させたメッシュ型組織です。
プロジェクト・チーム
部門を超えて課題解決を実現するため、従来の組織形態のまま、各部門から代表者を選んで編成する、時限的な組織です。
任務完了後、プロジェクト・チームは解散し、メンバーは元の組織へ戻ることが一般的です。
社内ベンチャー
新事業開発を目的として、一時的に社内に設置される、独立性の高い組織体です。
社内ベンチャーは、本社の支援を受け、独自に活動します。リーダーには大幅な権限が与えられます。
活動の結果が出てくると、予算や人員が拡充されて事業部になったり、分社化して子会社になったりすることもあります。
※組織の形態については、以下の動画でもくわしく解説してあります。
まとめ
この記事では、組織の定義・原則をはじめ、具体的な組織形態について、様々な類型をチェックしましたが、いかがでしたでしょうか?
組織の定義・原則については、その意味するところを、しっかりつかみ取ることが重要です。
また、組織の形態については、単に丸暗記するのではなく、それぞれの「目的」と「メリット・デメリット」を比較しながら覚えていくことで、中小企業診断士として必要な実践力も身につくことでしょう。
<経営組織論 関連記事>
- 経営組織の形態と構造(組織の定義・3要素からライン組織・事業部制組織など組織形態まで)【人気】
- 経営者・管理者行動
- 組織間関係
- 組織のコンティンジェンシー理論
- 企業統治(コーポレートガバナンス)
- モチベーション理論【おすすめ】
- リーダーシップ論【人気】
- 組織と文化
- 組織開発と組織活性化
- 組織学習【おすすめ】
- 組織のパワーとポリティクス
- 組織変革【人気】
- 人的資源管理(HRM:ヒューマン・リソース・マネジメント)その1
- 人的資源管理(HRM:ヒューマン・リソース・マネジメント)その2
- 労働基準法 その1【人気】
- 労働基準法 その2
- 労働組合法
- 労働安全衛生法
- 労災保険法
- 雇用保険・健康保険・厚生年金保険法
- 男女雇用機会均等法
- 労働者派遣法【人気】
- 育児・介護休業法、高年齢者等雇用安定法、職業安定法【おすすめ】
<おすすめ記事>
中小企業診断士の通信講座 おすすめは? ~独学にも使える、2023年最新版 比較・ランキング
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |